彼女は夜の仕事。
私は昼の仕事。
時間もなかなか合わないし、私も残業で帰りはいつも終電近くだった。
それでも
彼女と逢った日は黄色いマーカーでスケジュール帳に印を付けていて、スケジュール帳は黄色い印でいっぱいだった。
ほんの少しでもいいから逢いたい、と携帯に彼女からの留守電。
仕事が忙しいからだめだと思う、と返したが
彼女のか細い声を聞いていると何とかしてあげたくなってしまう。
というより自分も逢いたい。
仕事の都合で遅くなると思うけど、約束した。
待ち合わせは駅の改札口。
秋も終わろうとしていた季節の変わり目。
かなり寒かった。
私は仕事が押してしまい、約束の時間よりかなり遅れそうだった。
今日はもう逢えないと思って彼女にTELすると、
10分でも5分でもいいから逢いたい。待ってる。と言った。
私は走って改札口に向かった。
彼女が視界に入る。
彼女はかなり薄着だった。
店から出てきてそのまま。
普段タクシーで直行直帰なので上着とかあまり着ない。
キャミみたいな服一枚で胸も1/3くらい見える。
ただでさえ目立つのにその格好・・・
通り過ぎる人がみな振り返っている。
そんなことより、この寒さの中そんな格好で1時間も待っていたのかと思ったら少しパニックに。
とにかくダッシュ。
向こうも私に気付く。
手を振っている。
息を切らせながら彼女の前に立ち、とにかく肩に手をやった。
ものすごく冷たい。
寒かった?と私が聞く前に、彼女はにっこり笑って私の人差し指を握り自分の胸の間に挟み込んだ。
あったかい?
うん、あったかい。
めちゃくちゃ冷たかった胸の間だったけど心の暖かさを感じた。
ほんとうに。
駅改札での5分間だけの出来事。